ビジネスは「もうからないこと」やらない

日記

ビジネスは基本的に「もうからない」ことはやらない。
「そんなことリアル消防や厨房だって分かるぞゴルア」って言われるかもしれないが、この話を聞くとついこう言いたくなる。


信書便の民間参入を促進=独占範囲の縮小検討-総務省
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070206-00000245-jij-pol


要するに「郵便事業への民間参入促進」を、またぞろ国が言い出しているわけだ。


私の実家周辺にある唯一の金融機関が「郵便局」、それもクリーニング屋受託の「簡易郵便局」だ。全国にはこういう地域がそれこそ山のようにある。最近では規模が小さかったり極端に取り扱いの少ない郵便局を、経費のかからない簡易郵便局(簡易郵便局は一種の郵政公社代理店)に切り替える例が多いから、うちの実家のような地域は増えているはず。信金や農協でも店舗の統廃合が進む折、簡易郵便局が生活の拠り所になっている例は離島に限らず多い。私の実家だって人口20万人を超す、静岡県で数少ない地方交付税不交付団体の市にあるのに、このザマ。ちなみに銀行のATMは、山道をトコトコ下りて行った、4キロばかり先のコンビニが最寄り。宅配便の取次ぎ所もそこまで行かないとない。人口2000人近い集落でもこうなんだけどね。うちの最寄りの簡易郵便局も、それだけでは食っていけないからクリーニング店と兼業なんだが。


信書便の新規参入には「全国あまねくサービスを提供する」(ユニバーサルサービス)ことが義務付けられるのだろうが、それが絵空事に終わることは、通信自由化の結果を見れば明らか。各事業者がきちんとユニバーサルサービスを提供すれば、「1電話番号につき月7円の負担」を電話利用者に求めることなどないはずだ。


新規参入の信書便業者は儲けるために事業を展開するわけだから、私の実家のような地区など初めから埒外の扱いだろう。現在だって宅配便の配達時間指定は守られない。同じ地区内を一度で配達するからだ。


利益を追求した郵便サービスの具体例を、滋賀新聞時代にコラムで取り上げたことがある。場所は岡山県備前市の沖、瀬戸内海に浮かぶ日生(ひなせ)諸島。本土との公共交通は1日10往復足らずの巡航船だけである。ここの現実はどうか。郵便だと配達の局員がバイクごと船に乗り込み、島に渡って戸別配達。一方宅配便はというと、桟橋で宅配会社のトラックから甲板に積み込まれた荷物は、巡航船の乗組員によって島の桟橋にある「荷物箱」に無造作に放り込まれて終わり。いわゆる港止めで、そこから荷物を運ぶのは受取人の住民の仕事。高齢者が多い島では荷物を運ぶのは結構重労働のはず。ちなみに「全国完全配達」を謳い文句にしている黒猫マークの巨大宅配便会社扱いの荷物も港止めなんだが、あそこは日本国内じゃないのかね。


いわゆる規制緩和論者で、何人がこういう現実を見聞きしているのだろうか。日生諸島のような例は今後増えることはあっても減ることはない。残業代ゼロ法案関連で「過労死は個人の自己管理の問題」と言い放った、規制緩和論者の旗手といわれる口入屋の社長に、離島や山間部の現実を見せてやりたいものだ。


それでも「こんなところに住むほうが悪い。自己責任」と居直りそうだが。
とある関西の規制緩和論者の身勝手な行動に振り回された経験がある私には、こいつらどうも信用ならない。

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