足立坂東観音めぐり(1)

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4月の5~11日に中開帳が行われる、さいたま市とその周辺に札所が広がる「足立坂東観音霊場」にお参りすることにした。

この霊場の存在を知ったのは、たまたまお参りした近所のお寺の観音堂に「足立坂東観音札所」の看板が掲げられているのを見たのがきっかけ。その時は御住職の奥様に「午年の御開帳の時でないと納経が受けられない」と伺ったのだが、ネットで調べるとこの霊場、いろいろと面白い点がある。

まず、同じ県内で巡礼路が異なる霊場に同じ名前が付けられていること。そう、「足立坂東観音霊場」は、埼玉県内に2カ所あるのである。

一つは、桶川市の古刹・知足院を1番札所に、JR高崎線やニューシャトル(埼玉新都市交通)の沿線を回ってさいたま市北区の満福寺を33番札所にするもので、1702(元禄15)年の開創とされる。こちらの札元は知足院。
もう一つは、その満福寺を1番札所に、蕨市の定正寺を33番札所にする番外2カ寺を含む35のお寺からなる巡礼路で、こちらは1705(宝永2)年の開創とされる。後者の札元は定正寺。

で、ここまで書くとお分かりだろうが「同じ名前の異なる霊場」で、両方の札所を兼ねているお寺があるのも面白い。ちなみに、私がたまたま発見した「足立坂東」は前者の知足院が札元の方で、今回お参りするのは後者の定正寺が札元の方である。

この足立坂東観音霊場、さいたま市とその周辺に札所が点在している(札所一覧と地図はこちら)。ご開帳は午年の本開帳と丑年の中開帳である。この辺の観音霊場や薬師霊場は地区で管理しているお堂が札所になっているケースが多く、この機会を逃すと次の御開帳までお参りできないケースも考えられる。このチャンスにぜひ回っておきたいと考え、正確な御開帳期間の把握など準備を進めた。

 

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札所1番 楽邦山満福寺

何はともあれ、せっかくの御開帳だし1番札所から回るのが筋というもの。ただし、御開帳期間中の休みは公休の2日間と有給1日が確保できたのみで、この3日間だけで番外を含め35ある札所を全部回るのは、これまでの巡礼の経験から考えるとかなり厳しいというか、まず不可能。そこで一計を案じ、前もって有住の札所をいくつかお参りすることにした。

札所1番の満福寺は地籍は日進町だが、公共交通機関で行くなら大宮からニューシャトルに乗って、鉄道博物館前で降りた方がいくらか便利かもしれない。こちらは真言宗智山派のお寺で、札所本尊(脇本尊)は正観世音菩薩である。ちなみにお寺の本尊は不動明王。

満福寺では本堂の大普請が始まっていて、現在は基礎がほぼ出来上がった段階。札所本尊の観音さまは京都の仏師へ修理に出しているとのことで、今回は御開帳を見合わせるとのこと。やむを得ないが、本堂の方を向いてお勤めをして、仮の本堂となっている庫裏で御朱印を頂く。

ここが2つの「足立坂東観音霊場」の札所を兼ねているのは、どうやら明治維新のときの廃仏毀釈に端を発しているらしい。これから回る方の足立坂東観音霊場の1番札所は、もともとは大宮氷川神社の別当だった観音寺で、観音寺が廃寺になる際、法縁(お寺の親戚)だった満福寺に本尊や札所をすべて移したことでこちらが札所1番を兼ねることになったようである。

工事中の境内には、当時の遺構と思われる石碑が無造作に積み上げられたりしている。それらを見ながら、当時に思いを馳せるのも一興だろう。

【御詠歌】ふだらくや ねがいもかなう まんぷくじ
                                  いつもたへせぬ のりのともしび

(2009年3月29日巡礼=さいたま市北区日進町2-1003)
※満福寺の地図はこちら

 

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札所10番 大谷場宝性寺

札所10番の宝性寺は、JR京浜東北線と武蔵野線が接続する交通の要衝、南浦和駅のすぐそばにあるお寺。京浜東北線などからはこのお寺の大きな看板が見えるので、ご存じの方も多いかもしれない。

こちらは真言宗智山派のお寺で、本尊は聖観世音菩薩。本堂には足立坂東観音のほか、お不動様や新四国霊場の扁額が掛かる。大きいとはいえないお堂だが、いろいろと由緒深いお寺のようである。
寺務所で御開帳の準備をされていた御住職が、仕事の手を休めて対応をしてくださった。有難い限りである。

【御詠歌】しらまゆみ かりにいるみの やばやぐも
                          おぼへずあたる のりのおしへに

(2009年4月4日巡礼=さいたま市南区南本町2-13-4)
※宝性寺の地図はこちら

 

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札所23番 無動山妙智院観音寺

南浦和から赤羽経由で、札所23番観音寺最寄りのJR埼京線の北赤羽駅に向かう。目指す観音寺へは、北赤羽駅の浮間口から歩いて10分ほどか。

こちらは足立坂東霊場で、唯一東京都内にある札所。といっても、もともとこの辺りは現在の埼玉県に属していたらしいから、足立坂東の札所に名を連ねていても当然か。真言宗智山派のお寺で、札所本尊の聖観世音菩薩は独立した観音堂に祀られている(お寺の本尊は不動明王)。

観音堂の前には回向柱が建てられ、善の綱が既に結ばれていた。境内入り口にある桜が見事。

【御詠歌】きようまでは たびのかりねの うきまくら
                               かねにめざめて かへるふるさと

(2009年4月4日巡礼=東京都北区浮間4-9-2)
※観音寺の地図はこちら

 

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番外札所 園通山法福寺

一度赤羽に戻り、国際興業バスで鳩ケ谷へ。番外札所の法福寺に向かう。やや分かりにくい場所にあるが、サミットストアを目印にすると良い。

こちらは真言宗智山派のお寺で、本尊は十一面観世音菩薩。こちらも回向柱が建ち、受け入れ準備は万端のようだ。突然の参拝に対応してくださった御住職夫妻、道順のことをしきりに気にされていた。こちらは札所巡りに最適な地図を持ち歩いている旨を伝えると、ひと安心された様子。
こちらも境内の桜が見事。帰りにはお供物も頂き、恐縮する。

【御詠歌】やまざとを めぐりたづねて ゆきみれば
                         のりのふくじゆに しらたきのおと

(2009年4月4日巡礼=鳩ケ谷市里1577)
※法福寺の地図はこちら

 

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札所28番 鳩井山千手院

やや日が傾き始めたが、頑張ってもう一つ回る。札所28番の千手院は、草加市との境に程近い場所にある。この霊場唯一の曹洞宗のお寺で、本尊は千手観世音菩薩。

山門の扉は閉まっていたが、その脇から出入りできるようになっていたので、本堂の前でお勤めする。庫裏では御住職の息子さんだろうか、若い僧侶の方が対応してくださった。
山門の脇には足立坂東札所であることを示す石柱が立っている。

なお、この札所は細い路地の奥まったところにあり、自動車での参拝は困難。路上駐車は近所の方の迷惑になるので厳禁だ。近くの商店街にあるコインパーキングなどを利用するか、バスでの訪問をお勧めする。

【御詠歌】はらみつの かいのはかりに はとがやの
                             とびたつほどに おもへだいひを

(2009年4月4日巡礼=鳩ケ谷市坂下2-15-5)
※千手院の地図はこちら

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各札所の所在地は定正寺発行の「足立坂東観音霊場巡拝案内図」に、御詠歌は同「足立坂東順礼歌」に準拠している。

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